彼と彼(!?)の恋愛方程式〜危ないアバンチュール?
動悸?
息切れ?
眩暈?
恋とは錯覚と誤解から始まるものです。
長身と見下ろしてくる瞳の強さにばかり気が行っていて、劉鳳の肢体がこんなにも細いとは思わなかった。腕を回して抱き込めば、すっぽりと懐に納まってしまう。
別段、華奢という訳ではない。
きちんと鍛えられた身体を持っていたけれど、自分とは骨格の作りからして違うのだろう。
劉鳳の手によって外されていた制服のボタンの残りをはずしたカズマは、眼前に晒された半身にしみじみと思った。
「・・・すげぇほっせーなあ。アンタ、ちゃんと飯喰ってんのかよ?」
「よ、余計な世話だッ! さっさと俺の上からどけッッ!!」
顔を羞恥で赤く染めながら睨まれても可愛いだけである。
それでも、じたばたと往生際も悪く抵抗を続ける劉鳳にカズマは舌打ちすると、再び文句を言おうとして開きかけた劉鳳の唇を自分のそれで塞いでしまった。
「!? ・・・んッ、んん〜っ・・・ん・・・んんぅ・・・」
口を閉じないように顎を指で押さえて固定する。
舌を差し入れて口内を思うがままに蹂躙すれば、慣れない口づけですっかり酸欠になった劉鳳の抵抗は収まっていた。
「・・・はぁ、はぁはぁッ・・・ふ・・・は、あッ・・・」
艶やかな唇から零れる吐息。
滲んで色を濃くした瞳。
どこか夢見心地の表情。
怜悧な表情と冷徹な言動に目が奪われてしまうが、それを越えて内側に踏み込めば、劉鳳はひどく男の慾をそそるタイプだった。
「劉鳳・・・・・・」
「ひゃッ! ・・・な、なに・・・・・・?」
耳元で低く紡がれた名に、びくり、と身体が反応する。
自分の反応が信じられなくて目を瞬かせた劉鳳に、カズマは口の端を引き上げるようにして笑うと、そのまま首筋へと唇を押しあてた。
「アあッ! ・・・んん・・・ッ・・・」
落とされた口づけに緊張する肌を感じながらきつく跡を残す。
白い肌に栄える赤い鬱血の跡。
どうしようもなく扇情的だと思う。
「・・・やあ・・・、やだ・・・や・・・も、やだぁ・・・」
幼子がいやいやを繰り返すように劉鳳の頭が振られるたびに、ぱさぱさと音を立てて散る髪が未だ衰えを見せない太陽の光に照らされてきらきらと光る。
「や・・・もぅ、やぁ・・・だぁッ・・・!」
力の入らない腕で、それでもカズマの身体を押しのけようとする劉鳳に対し、カズマは往生際が悪いと思いつつも身体をずらして嫌がる彼の顔を覗き込んだ。
「・・・劉鳳・・・・・・?」
「・・・う・ううッ・・・・う、・・・うあ・・・」
その血石の瞳からボロボロと涙をこぼしてしゃくり上げている劉鳳の無防備な姿に、カズマは逆に煽られてしまう。
(・・・コイツってすげぇそそる・・・・・・)
幼い表情。
稚拙な態度。
出会った時に見せた傲慢なまでの表情は何だったのだろう。
それとも、これが本来の劉鳳なのだろうか。
どちらにしろ、もう止められないほどに劉鳳へとのめり込んでいる自分をカズマははっきりと自覚した。
「ほら、泣くなって。な、平気だから・・・」
「んんッ、う・・・うあッ、・・・やっ、やあ・・・」
大地に力無く横たわる劉鳳の半身を抱き寄せて、目尻から転がり落ちる涙を唇で拭ってやる。優しい仕草と言葉で劉鳳を慰めるが、それとは裏腹にイタズラな指はするり、と下肢に伸びていた。
カズマの指が自身に触れたことで、信じられないとばかりに目を見開いた劉鳳の視界に涙で滲んだカズマの顔が映る。それがどこか意地悪く見えたのは劉鳳の気のせいではなかったのだろう。布越しに触れるだけでは済まされず、ズボンのベルトをゆるめて直接触れてきた指に劉鳳は反射的に身体を離そうとするが、しっかりと抱き込まれた身体はびくりとも動かなかった。
「・・・ッ、ん・・・やぁ・・・やだぁ・・・ふあぁ・うぇッ、ひっく・・・」
感じたことのない強い悦楽は、それを受け止めきれない劉鳳に苦痛となって襲いかかる。
無意識に腰を揺らめかせながら、下肢から這い上がるどこかぴりりとした痺れに劉鳳はぎゅっと目を瞑って耐えた。
「やッ、ああ!・・・んく・・・かず・まぁ・・・も、もぅ・・・許し・・・」
「ああ・・・、キツイ? ん〜、でも、大丈夫だからさ。」
身体を戦慄かせながら涙で滲んだ声でカズマに懇願するが、慰めるように口づけを繰り返しながらもカズマは一向に劉鳳を開放しようとしない。
「んん・・・ん、んンッ! ・・・ ン、んんぅッ!!」
とろとろと零れ始めた劉鳳の蜜にすべらかさを増したカズマの手が動きを激しくする。どれだけ訴えてもカズマが自分の望みを叶えてくれないと悟った劉鳳は、だんだんと霞がかかってくる思考の中、カズマの肩口に埋められた口を開いて彼の服を噛みしめ、背筋を這い上がる未知の感覚に耐える。
投げ出されていた劉鳳の両手がゆるゆると持ち上げられ、自分を片手で抱き込んでくるカズマに習うように背へと手を回した。
自然と密着する身体。
全身で縋り付いてくる劉鳳に気をよくしたカズマは、彼の白い肌に強く鬱血の跡を残しながら、張り詰めていた劉鳳自身を極みへと導いた。
「・・・はッ、はぁはぁ・・・はあ・・・はぁ・・・んッ・・・」
全身を硬直させて全てを吐き出した劉鳳は、引きつるように息を吸い込んでから全身を弛緩させた。全身で息を吐きながら呼吸を整える劉鳳は、抗うことなくカズマの口づけを受け容れる。
「なあ・・・?」
「んんッ!? ・・・あ、ぁいや・・・ッ!」
耳に注ぎ込まれる低い声と、一度達して敏感になってしまっている場所を再びまさぐる指に、劉鳳は頭を振る。
「とりあえず建物の中に入ろーぜ?」
熱っぽいカズマの声。
その声に含まれた慾に劉鳳の身体が逃げをうつ。しかし、こんなおいしい状況をカズマが逃すはずもなく、劉鳳の抵抗はあっさりと止められてしまった。
「オレは外でもいいけど、こんなアンタを他のヤツに見せたくないし。」
「・・・ !? やッ、いやだ!!」
何とか逃げ出そうとしている劉鳳の決断を促すために、そのまま続きを始めようとしたカズマを劉鳳は必死になって止める。
まだ陽の光がある内にこんなことを しかも外でされるなんて。
誰かとこういうことをすることなど考えたこともないというのに。ましてや男同士で誰の目に触れるか分からない外で イかされてしまったが 続き(?)とやらをするなんて絶対に死んでも嫌だ。
「・・・OK♪ じゃ、続きは中に入ってからな。」
とても機嫌のいいカズマに抱き上げられながら、劉鳳は自分がかなり早まった決断をしたのではないかと感じていた。
「んッ・・・んぁ・・・ふぅ、あッ・・・あ・・・」
びくびくと揺らぐ身体。
カズマの手と唇。注がれる熱に翻弄される。
全身を暴かれ、信じられない反応を引き出されていく。
カズマに連れられて足を踏み入れた建物は、辛うじて建物としての形を残しているような場所だった。それでも外よりはマシだと言えるだろう。
建物内のひやりとした空気が身体の熱を冷ましたのは・・・一瞬だったけれど。
意識が真っ白になっていく。
もう、必死になってカズマの動きを追うことしかできない。
「ッつ・・・ふ・・・ああ、やだ・・・ッ、そ、そんな・・・とこッ!」
自身に絡んでいた指が、伝い始めた流れに沿って奥底へと辿り着く。
自分で触れることも、見ることもない場所に触れられていることで羞恥が増した。
「だぁって・・・、慣らしとかないと。アンタがキツイんだぜ?」
指から逃れるように身体を伸び上がらせた劉鳳の細腰を掴んで逆に引き寄せたカズマは、頭を振る劉鳳に意地悪く告げる。
「・・・ !? 慣らす・・・って?」
「・・・・・・こーいうこと。」
言われた意味が分からないのか。
目を瞬かせてカズマの顔を見つめてきた劉鳳にくすり、と笑うと、論より証拠とばかりに触れていた指を含ませる。
「!! ・・・ んぁッ! ・・・あ、あ・・・ッ!」
身体を押し広げる動きに僅かでも慣れれば新たに指が増やされていく。苦痛と異物感。けれど、否定しきれない快楽がどこかに潜んでいて。
「あ、ぁ・・・ふッ、うあ・・・んン・・・くぁあッ!」
自分自身がどうなってしまうか分からない不安と恐怖に軽いパニックに陥りつつも、容赦ないカズマに翻弄される劉鳳は掠れる嬌声を紡ぎ続けた。
「劉鳳・・・、ちょっと我慢してくれよ・・・?」
ずるり、と奥底から抜き出された指に安堵する間もなく、霞んだ意識に滑り込んできた言葉の不審さに劉鳳はカズマの顔を見つめる。
泣き濡れた瞳で不安げな視線を寄越す劉鳳へと啄むように口づけたカズマは、力の抜けきった腕を首に回させるようにしてやると散々解した場所へと自身を押しあてた。
「・・・・・・あ・・・」
触れてくる熱さに劉鳳の喉が引きつったように動く。
カズマは、艶やかな唇から拒絶の言葉が紡がれる前に、一気に自身を劉鳳の内へと沈めた。
「ヒッ! ・・・く、ぅあああぁぁぁぁッッ!!」
劉鳳の口から悲鳴が迸る。
弱々しい力で抗議するように背を叩く劉鳳の幼い仕草に罪悪感を感じるが、きつく締め付けてくる部分がもたらす快感に我慢できない。
「も、ダメだ。悪りィ、劉鳳・・・ッ!」
「・・・い、やぁッ! ・・・く、ふッ・・・ああッ・・・ひィ・・・いぁあ・・・」
身体の中を押し上げてくる動きに翻弄される。
キツイ痛みと奥底の悦楽。
相反するものに意識がついていけない。
「や・・・、もぅいやぁ・・・あ、ああッ! ひっ・・・いあッ!」
がくがくとカズマの思うがままに揺さぶられる身体。
痛みに萎えかけていた自身を捉えられて抜かれれば、はっきりとした快感が身体を走った。
「あ・・・ああ、ふ・・・ぇっく・・・ひィ・・・」
確実に高められていく身体。
涙で滲んだ瞳は茫洋とした浮かべ、既に正気とも呼べない色を見せている。
感じるままにカズマを締め付けてくる奥底に、劉鳳を穿つ動きが激しく、荒々しくなっていく。
「あ、ああッ! ・・・ ッ!!!」
押し上げられる度に堪えきれないとばかりに零れていた吐息が、一際高い、掠れた嬌声を含む。最悪まで押し入ったカズマに敏感になった内壁を抉られた劉鳳は、堪えることなく絶頂を極めた。
そして、一際強く締め付けてきた内壁に、カズマも劉鳳の最奥で自身を解放したのだった。
動悸?
息切れ?
眩暈?
恋とは誤解と錯覚から始まるものです。
「・・・こんなにアンタが可愛かったなんて、な・・・・・・」
くうくうと眠りにつく劉鳳の髪を梳く。
初めての行為は劉鳳の気力も体力も根こそぎ奪ったようで、終わってみれば、彼はすっかり意識をとばしてしまっていた。
大したことはできないけれど、できる範囲で身支度を整えてやっても劉鳳は一向に意識を取り戻さない。
キツイ印象の瞳が閉じられただけで、こうも劉鳳の印象が子供っぽく変わるのかと内心でひとりごちながら、さすがに陰り始めた陽の光に肌寒さを感じて劉鳳を抱き込んだ。
「・・・ん・・・・・・」
「劉鳳・・・?」
暖かな温もりに惹かれたのか。
劉鳳がすり寄るようにカズマの胸元へと顔を埋めてくる。
それが何となく嬉しくて。
何だかとても安心できて。
カズマは、我知らず笑みを零していた。
暖かで優しい笑顔を 。
そして、恋とは。
あなたとわたしの紡ぐ物語。
END
